ここが変だよ、ケアマネージャー。他職種から来た30代男性ケアマネの視点
ケアマネの免許を取って5年目になる。元々はホスピスの事務長をやるにあたって何か箔をつけといた方がいいだろうという程度で取った資格で、全然活用はしていなかった資格ですが、将来日本で仕事するにあたり介護保険による固定収入を得るためにケアマネで一度働いてみるのも良いかなと思い働いてみました。
目次
ケアマネとは何なのか?
ケアマネとは
介護支援専門員(かいごしえんせんもんいん)は、介護保険制度においてケアマネジメントを実施する有資格者のこと。要支援・要介護認定者およびその家族からの相談を受け、介護サービスの給付計画(ケアプラン)を作成し、他の介護サービス事業者との連絡、調整等を行う。介護保険法に基づく名称は介護支援専門員であるが、ケアマネジャー(care manager)とも呼称される。
Wikipediaより
よくわからないのでざっくり言います。
「介護に関して困っている人の相談を聞いて、解決する方法を探す人です。」
ここで重要なのは相談に乗るという事です。私達ケアマネは相談に乗るということ以外、おむつ交換や、トイレの介助など一切の身体的介護はおろか、掃除や買い物といった生活に関する介護に関しても何もやりません。
ただ相談に乗り、その人がぶちあたっている困難に関して、介護保険サービスや、社会資源、家族含めた交友関係を駆使し、解決のお手伝いをする仕事です。
なので相談技術やバランス、本人を含む周りの話を聞き、調整して落とし所をどこにするかなどが求められる。先進国では大学を卒業した修士以上の学位を持った人が担当する事の多い専門職です。
ここが変だよ、ケアマネージャー、多すぎる研修、内省会
内省が多すぎる。
ケアマネは前に書いたとおり非常に専門性が求められる仕事です。相談、面接技術から、介護保険に関する幅広い知識、その土地にある介護サービスを中心とした社会資源、膨大なペーパーワークを処理するためのパソコン等のIT知識。
これらを全て兼ね揃えたスーパーマン(ウーマン)こそがケアマネに必要とされる人材になります。
噛み砕くと
「パソコンが超出来て、さらに人当たりもよく、かといって優柔不断ではなく決める時は決めて、幅広い知識と人脈を持つ人物です。」
そんなバランスの良い人はめったに存在しません。
そしてケアマネの世界は更新研修を始めとした、研修が山のように存在し、そこに出席する度に
「君たちはケアマネとしてまだまだだ。」
「ケアマネに医療の知識がない事が問題。」
「担当した事例を持ち寄って反省会をしよう。」
などとお金を支払った上、自己研鑽を促されるドMな研修が多々存在しております。
実際私も今年5年目で免許更新の年だったのですが。4万円ほどの講習プラス、延べ10日55時間におよぶ研修が存在します。
そしてみんな仕事の時間を削ってまで来ている中、研修最終日に講師から言われた一言は
「あなた達のような人達が実際にこれからケアマネの実務にあたっていく事を考えると、不安な気持ちが正直大きいです。」
などと揶揄されました。
最期くらい褒めても良いのでは、、
実際そう思っても
「お疲れさまでした。」
も一言で良いのでは、、
と強く思ったのを覚えています。
介護界に存在する価値観の押し付け
困難事例は周りが困難事例にしている。
介護界にはびこる“やってあげなきゃ病”の存在です。
僕の担当していたケースで介護付き高級マンションに住んでいるおばあちゃんがいました。
その方は認知症の初期症状、いわゆるまだら認知と呼ばれる段階で、ある部分ではしっかりしているがある部分はかなり認知が進んでいるという状態でした。
その方を担当する事になり、まずそのマンションの相談員に言われたのが
「薬の飲み間違いが最近多いので、介護保険で出来る部分はヘルパーに介入してほしい。」といった内容でした。
そこでご本人に話を直接聞くと
「私は薬の飲み間違いなんてやっていない。そもそも薬なんて飲まなくて良い。大事な薬は無い。」
とおっしゃります。
はい、意見の対立ですね。介護の現場ではよく見るケースです。
このケースの場合は本人とマンションの相談員との対立というケースですが、実際は本人と家族であったり、家族と介護施設、色々なケースがあります。
問題の一つはマンション側がすでに勝手に自分たちで介入している事でした。利用者からすれば介護保険は1割負担です。
ただマンション側でやってくれているうちはタダなのです。
利用者からするとタダで行っているサービスをいきなりケアマネがやってきて
「これからヘルパーが行う事になります。そして1割はあなた様の負担になります。」
と言われ納得できるでしょうか?
まずそこに一つの壁がありました。
そしてもう一つの壁は本人のニーズが無い事でした。
本人は薬はしっかり飲めているし、薬の重要性も感じていません。
それでも僕はなんとかうまく話しの流れで薬の重要性を引き出し、料金にも納得してサービスを入れていただければいいと思い、本人との話合いに望みました。
話し合いは二人で行う予定だったのですが、まず最初の誤算はそのマンションの相談員が、話し合いに勝手に参加してきたところです。
そこでうまく話しでくれるのかと思ったら
「もううちではお薬の管理ができないから。ヘルパーさんにやってもらう事になるからいい?」
と言われ、もちろんおばあちゃんとしては
「もう薬は自分でやりたい。いちいちマンションの人にも関わってほしくないし、自分で出来る。」
と言い張って聞きません。
そしてところどころで相談員が
「ケアマネさんからも何か言ってあげてください。」
と話しを振ってきます。その後二人はヒートアップし、最終的にはおばあちゃんが
「もうこんなところ入らんかったら良かった。」
とか
「もうはよ死にたい。」
という言葉を発するまでに至りました。
結局そこは喧嘩別れし、話がまとまらず本人抜きでその後相談員と話す機会があったので、僕ははっきり言いました。
「本人が望んでない事はするべきではない。薬の飲み間違いは心配かもしれないけどそれをあなたたちが強制できるほどの権利はない。」
と。この場合相談員は薬をいかにうまく飲んでもらうか。どうやったら自分たちの手間を減らし、ヘルパーに繋げられるかという事に執着していますが、問題はそこではありません。
薬をうまく飲める、飲めない。ヘルパーが介入する、しない。では無く、このおばあちゃんがどういう人生を歩んできたかという事が一番重要で大切な問題なのです。
多くの人が見逃したり、ないがしろにしがちなこの生活歴ですが実は認知症がみられる場合や、本人との意思疎通が難しい場合などにとても大きなヒントになることがあります。
国語のテストの解答用紙に必ず答えが載っているように、生活歴に必ず答えはあります。
例えばこのおばあちゃんの場合は結婚歴が無く、タイピストとして銀行で定年まで勤め介護付き高級マンションを購入した人です。
要するにずっとあまり人に頼る事無く、一人で強く生きてきておられたお方です。
お薬の飲み間違いが1度あった事実は事実ですが、なんでも一人でやりたい人です。その気持ちを汲み取る事もせず本人の思う暮らしは成り立ちません。このように生活歴を無視した介護サービスが現実にはたくさん存在します。
しかし残念なことにその後も相談員から
「服が最近汚れてるから着替えさせてほしい。」
とか
「お風呂に最近週1回くらいしか入ってないようなので入れてほしい。」
とか本人の意向を無視した、サービスの提案をされます。
それは本人から
「最近お風呂が入れなくて困っている。」
や、本人が服薬管理に失敗したり、お風呂に入るのが身体的にきつくなったタイミングで介入すればいいだけの話です。
このように周りが困難事例にしているケースがたくさんあります。
他にも老人ホームに入ってるおばあちゃんが
「家に帰りたい。」
と言ってきかない場合、大事なのは家に帰す、帰さないではなく、そのおばあちゃんが家にどれだけ思い入れがあるか、生活歴から計る事が重要なのです。
同じ家に帰りたいでもそのおばあちゃんが20代で結婚し、夫婦共働きで30半ばでやっとの思いで購入した思い入れのマイホームなのか、1か月前に引っ越したばかりの賃貸アパートなのかで「家に帰りたい。」の意味は大きく変わってきます。
今後認知症の人が増えていったときに、このような本人のニーズが無視される方が増えてくるのかなぁーと自分の身を含めて心配になります。
僕がおじいちゃんになったら折り紙を折ったり、みんなでテレビ見てまったりするようなデイサービスには行かせてほしくないなぁ、なんてよく考えました
このように周りが勝手に本人の性格や、生活歴を無視して“やってあげなきゃ病”に罹患しているばっかりに困難事例にしているケースが多々存在するのです。
このようにケアマネは非常に大変な仕事ですが、それ以上に学べる事や、やりがいの多い仕事でもあります。
次回はまた時間があればケアマネで実際関わった利用者さんで興味深かったケース、ケアマネの相談コミュニケーション技術で使えそうな所をまとめますので良かったら見てみて下さい!
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