カリブ海にて考え中 Thinking something in Caribbean

豪華客船で起こる色々な事。

ダイヤモンド・プリンセスの契約を終えて

 どうもリョウタです。

 

8ヶ月弱のダイヤモンド・プリンセスの契約を先週終えました。

僕は関西に住んでいるんですが、帰ってきてのんびりしている所にいきなり地震がやってきて、阪神淡路大震災、東日本大震災(この時つくばにいました)、そして今回の地震。

もちろん前2つの地震に比べれば今回の地震はそれほど被害は大きくなかったようですが、帰ってすぐの事だったので僕はことごとく被災する運命なのかと思いました。

 

 

 

さて日本人の方に大分お馴染みになってきたダイヤモンド・プリンセス号。日本発着のクルーズを始めて今年で5年目のようです。

 

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今回こちらの船で船上の鍼灸師として5回目の契約をいただくことになり働いてきました。

日本発着ということで、以前働いていたディズニーの豪華客船とはまた違った意味での特殊な感じがあり、ダイヤモンド・プリンセスは日本人の方にとってお客さんとしても、またはクルーとして働く可能性も含めて接する機会が多い船だと思うので記憶が新しいうちに思った事を書き留めておきます。

 

 

 

 

 

 

食事について

プリンセスの食事はとても美味しい。ディズニーとひけをとらないと言っていいほど。ただディズニーの時のように僕のポジションではルームサービスを取るということは出来ない。

特に今回特筆すべきはジャパニーズシーズンに滞在したので、日本食を取ることができた。

ちなみに食堂で味噌汁をオーダーするとこんな感じで丁重に提供される

 

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鍼灸師はオフィサーメス(食堂)で食べることができるので最初はオフィサーメスで食べていたけれど、契約が4ヶ月を超え、オーストラリア、ニュージーランドシーズンも終盤に差し掛かって来た頃からしんどくなって全くオフィサーメスに行かなくなった。

というのもスパから物理的に真逆の位置にあるオフィサーメスはとても遠く、往復の時間だけで10分弱とられる(12万トン級の船は大きい)。

シーデイだとお昼休みをとらず、その分患者さんを診ることも多かったので結果全然オフィサーメスに行かなくなった。

食事に関しては今回のコントラクトで大きな発見があった。自分は20代ほとんどひとり暮らしだったこともあって食事なんて何でも良くて全く気にならないし、むしろタダで食べられるだけでそれだけで幸せと思っていたが、やはり日本食は美味しいし、テンション上がるし、元気が出る。

またオフィサーメスにお箸が常設されているのも後にも、先にもこの船くらいだろう。

 

 

 

 

 

クルーメンバー(仕事の同僚)について

まず最初あまりの日本人のクルーの多さに驚いた。あちこちで日本語が飛び交っていて、今まで船に日本人なんていても数人か、はたまた自分一人しかいないこともあったがこの船では日本人が市民権を得ている。

聞いた話によれば100人くらいの日本人が働いているそうだ。

そして近いところでは一緒の部署で働くスパの同僚も日本人の女の子達だ。船ではいつも完全に外国人のノリでハグや、ボディタッチをしまくっている自分だったがこのコントラクトでは全く出来なかった。

むやみにするとHR(船の人間関係のトラブルを解決する部署)に行ってセクハラという風に訴えられかねない。日本人のみんなも当たり前だけど敬語で話しかけてくるし、なんだかとても不思議な感じがした。

でもマネージャーの言ったことや、船のセーフティーオフィサーの言ったことで微妙にわからない英語のニュアンスの話を日本人同士だと日本語で確認できることは嬉しかった。

20人弱いるスパメンバーの中で一番多い時で10人弱、少ない時で自分含め3,4人が日本人だった。

マッサージセラピストたちも含め、ダイヤモンド・プリンセスのスパはかなり忙しい部類に入ると思う。

ディズニークルーズで働いていた時のスパはかなり忙しく、僕よりも忙しそうなマッサージセラピストがいた。

それほどじゃないとしても、色んな船をみてきた中でダイヤのセラピストは時期にもよるが忙しい部類に間違いなく入る。

スパのセラピストはお客さんがいないとプロモーションといって宣伝(ビラを配ったり)に行かないといけないので、忙しいほうがもちろん良い。

 

あと大きい点は他の部署にも日本人がいることだ。今までのコントラクトではあまりスパメンバー以外と話すことが無かったけど、今回は日本人ということもあって他の部署で働いている人の話を結構聞くことが出来て、どういうシフトで働いているのかとか、お給料、この船の仕事を得た経緯等、色々聞けて面白かった。

 

 

 

 

 

仕事について

よく船乗り鍼灸師の間で

日本シーズンは暇。全然お客さんこないよ。

って聞いていたけれど結果全然そんなこと無かった。

僕の治療院の売上で言うとコンスタントにずっと忙しく大体1週間で7,800ドル(7,80万円)、一ヶ月で30,000から35,000ドル(300から350万円)くらいの売上があった。

これくらいあれば会社もとやかく言ってこないので自分の好きなように休みを組んだり、仕事をやらせてもらえる。

今回のコントラクトは僕の治療室がスパと少し離れたところにあるという環境も相まって、ほとんど全体ミーティングにも参加しなかった。

スパにいる時はほとんど患者さんを同時並行で二人治療していた。全体的にストレスも無いので気持ちよく仕事が出来た。

日本人の患者さんと外国人の患者さんを交互に治療してて気づいたことは、日本人の患者さんのほうが多く話してくれて、会話が続くこと。

恥ずかしながらもう船に乗って結構経つのだけれど、英語を話しながら治療に集中することは今でも難しい。日本語のようにネイティブな言語だと会話をBGMで流しているような感覚で会話をしながら治療に集中できるが、英語だとそれがまだ出来ない。

なのでどうしても外国人に患者さんと接する時は問診や理学所見を取るときに一気に話して、いざ鍼をいうつというタイミングになると静かになってしまう。

これは前に話した治療について

muranak.hatenablog.com

 

治療者と術者の関係性をまず構築することにこれからも取り組んでいくなら、克服しなければならない課題だ。

 

 

 

寄港地について

今回の契約では10月末に乗船し、6月半ばで下船するまで11月末〜4月頭までオーストラリア、ニュージーランド。そして乗船すぐと、4月頭に日本へ帰ってきてからは主に日本を起点として韓国、台湾、そして東南アジアを回っていた。

オーストラリアのポートにもっと停泊するのかと期待していたが、実際メルボルンとダーウィン、そしてタスマニアのホバート以外はほとんどニュージーランドだった。

ニュージーランドは僕の周りにいる友人の中でも評判の良い国で、中には船を降りてニュージーランドで働いている友人もいるが、個人的にはそんなに心惹かれなかった。

鍼灸の仕事があるかは別としてもっとごちゃごちゃした東南アジアのタイや、ベトナム。もしくは結局日本に将来住みたい。

僕は以前述べたように寄港地としてはやはりアイスランドが大好きだ。冬のアイスランドには行ったことがないし、寒さのせいで僕の副鼻腔炎が悪化することをさておいてもアイスランドの自然は素晴らしかった。

 

muranak.hatenablog.com

 

今回の契約で個人的に一番楽しかったのはベトナムのナトランで、ここで食べた生春巻き的な何かはとても美味しくて安く、僕の中で松屋の牛丼のコストパフォーマンスを抜いて、この世界に存在するもののコスパランキング1位に認定された。

 

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日本シーズンも思ったより楽しめた。

金沢などかねてから行きたいと思っていたところに行けたのは言うまでもなく良かったが、逆に自分で計画を立ててプライベートでは絶対行かないような境港(鳥取)など行ってみると、すごい街全体が豪華客船で街おこしを頑張っていて感銘を受けた。

あと日本シーズンはご飯が美味しい。

オーストラリアやニュージーなど外国のポートの時はオフでも船で昼ごはんを食べて(そうすると無料なので)、出かけることも多かったが、日本シーズンだと高知のカツオのたたき、金沢のお寿司、北海道のラーメン、鹿児島の黒豚。そういったものにはあらがうことが出来ず、随分とお昼ご飯にお金を散財してしまった。

 

 

 

まとめ

結果日本発着のあるダイヤモンドで働いて良かったなーって心から思う。

ディズニーマジックに次ぐ思い出のある船になった。

 

自分がまだ経験の浅い1stコントラクト、2ndコントラクトの頃、豪華客船で働く事は自分にとって海外で外国人と、英語を使って働く始めての経験だった。

しんどいと思いつつも一体何がストレスなのかわからず闇雲に、がむしゃらに働いていた。

今回の契約は豪華客船の仕事にも慣れてきた良い頃に日本シーズンの船に乗せてもらい、さっき患者さんのところで触れたように日本人や外国人のお客さんと交互に触れる中で

“こういうところが自分には足りないな”

 とか

 “こういうところを自分はストレスに感じてるんだな”

 とか

結構クリアに見えてきた気がした。

例えば英語で思ったようにコミュニケーション出来ないという問題を抱えていた場合、船の中で何かうまくいかないことやストレスを抱えると全てそれのせいにしてしまいがちだけれど、今回のように日本人もいるような環境で働くと

 

なんや英語とか言語の問題じゃないやん。日本人相手でもこれは自分にとってストレスなのか。

 

というふうに明確になっていき自分にとって多くの発見があった契約になった。

 

別にネガティブキャンペーンをするわけじゃないけれど、豪華客船の仕事は結構きつい。

1日も全日の休みの無かった8ヶ月弱、ずっと休まず働き続けられるような屈強な体力。

閉鎖された人間関係や、環境の中で課されるノルマに負けない強靭な精神力。

 

引退したプロ野球選手がずっと元プロ野球選手っていうカテゴリで片付けられるように、もしこの豪華客船での仕事を終えた時、元豪華客船の鍼灸師っていう風にカテゴライズされて、あの時は辛かったけど楽しかったなーって振り返ってばかりいる自分は嫌なので、とりあえず今のところは野球の山本昌選手、サッカーでいうキングカズ選手のように長く豪華客船でプレイできるようなそんな体力作りやメンタルマネジメントを出来るよう今後も続けていきます。

 

 

 

この記事を書いている今ごろ、ダイヤは関門海峡を抜けて釜山にむかっている最中です。8ヶ月も苦楽を共にした場所なので、船を離れても少しの間はみんなが今どこにいて何してるのかなーとか気になります。

なんだか別れた彼女の事を思ってるみたいで嫌なのですが多分これは少しの間続きます。

次はダイヤモンド・プリンセスよりまた一回り大きい17万トン級の船に乗船し、オーストラリア、ニュージーランド辺りに行く予定です。

もちろん豪華客船以上に自分がワクワク出来て輝ける場所が見つかれば、その時が引退の時だとも思っています。

 

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