国家試験を受かったばかりの10年前の自分に豪華客船で働かないかとLove Letter書いてみた
国家試験合格おめでとう。
君は昔から勉強が全然出来なかったのに、今回だけは頑張ったね。
中学の時テストの成績が全校生徒230人中200位以内にも入れなくて、当時の担任から
「この子はどう頑張っても公立の高校に行けませんよ。」
と三者面談で告げられた際、さすがにうちの母はとてもショックだったらしい。
それでいてなんとか公立高校に受かって、報告にいったらあの担任
「おめでとう。」
なんて涼しい顔でサラッというから、2歩で2個うんこ踏めばいいのにとか思ったよね。
はり、きゅうの国家試験に受かった君はいよいよこれから社会に出るわけだが、社会は君が思ってるより悪くない。
自分が社会に出て、お給料をもらって食べていけるか不安に考えているんだろうが、それは実はそんなに難しい事ではないし、臆する事では無い。
それどころか社会人の人間関係は学生時代のそれと違って、会社でも病院でも基本何かしらの目的を共有している。
その目的達成のために君の事が役に立つと思うなら、多少変人でも歓迎してくれるからそこは安心してほしい。
何も共通の目的など無くても時間を共有できるのが友達。
何か共通の目的や目標に向かって一緒にやっていくのが仲間だ。
君は友達を作るのは上手くないにしても、仲間を作るのはそんなに下手じゃないから大丈夫。
前置きが長くなってしまったが僕は今豪華客船で世界を旅しながら鍼灸師として働いている。
国家試験に受かったばかりの君からしたら
「冗談言ってんじゃねーぞ、寝言は寝て言えこのタコ助が。」
って思うかもしれない。でもこれは本当なんだ。
僕は今日本から遠く遠く離れたカリブ海に浮かぶ豪華客船で、たった一人の日本人鍼灸師として外国人と一緒に働いている。
そう、今君が手に入れたその資格を活かして。
日本では
”鍼灸師は飽和状態”
とか
”鍼灸師で食っていくのは難しい”
だのとやかく言われているが海外に出ると日本鍼灸というのはそれだけでブランドであり、絶対的な武器になり得るんだ。
だからこれからの就職先として病院、接骨院、鍼灸院色々考えてはいるだろうけれども、この文章はその候補の一つとして海外の豪華客船はどうですか?というものだ。
もちろん危機感という危機感を前世に忘れて来てしまった君にとって、合格発表があってから仕事を探そうと思っていたはずなので、今まで就職活動なんて全くしていないはずだ。
では今日は豪華客船で鍼灸師として働くという事はどういう事なのか。簡単に説明して見ようと思う。
決めるのは君次第、強制はしないから聞くだけ聞いてほしい。
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なぜ豪華客船の仕事が君におすすめなのか?
それは端的に言って「誰でもなれる仕事」だからだ。
いきなり身も蓋もない事を言って申し訳ないがこれは事実だ。
君の乏しい想像力で考えたとしてもそれはちょっと違うのではないか。と思うかもしれない。
しかし豪華客船鍼灸師は基本的に資格を持っていて、健康状態が優良な成人男女であれば誰でもなれる。
これはもう5年以上船で働いている僕が言うのだから間違いない。
ただし「誰にでも続けられる仕事」ではないのは確かだ。
この辺りは話始めると少し長くなるから、またあとで詳しく話す事にしよう。
例えば今の君が何か研究がしたいと思っても、学位が必要だから大学教授になる事は無理だ。
今の君が開業しようと思っても、貧困真っ只中で、もやしとコーンフレークが主食である経済状況では無理だ。
その点豪華客船鍼灸師は準備さえちゃんとすれば半年くらいで大体乗れてしまう。
でも乗ってからはどうなるの?
って君は思うかもしれない。
それは聞かないでほしい。乗ってからなんとかしよう。
実際僕は6年前、英語なんてハローとサンキューとコカ・コーラくらいしかほとんど知らずに乗った。
でも結果こうしてなんとかなっている。
君の強みはなんと言っても生命力がある事だ。
乗って臨床も英語も荒波に揉まれよう。船だけに。
治療に、英語に、人間関係に悩み、そして死にたいという夜を150回くらい超えた辺りから、成長が実感できるようになる。
だから豪華客船に乗って君が初めてしなければならない事は7ヶ月間なんとか生き延びる事だ。
決して夜の甲板に一人で出てはいけない。あそこから海面に出来る泡を眺めていると、ふと身を投げ出したくなってしまいそうになる。
だから近づかない方が良い。
船で働くことの良い所も言っておくと、色んな国を仕事しながら旅できる。
別にこれに関しては多くを言うまでもない。写真を適当に乗っけておくから参考にしてほしい。
みんなの憧れサントリーニ島
あと考え方の視野が広がる。
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豪華客船鍼灸師の仕事について
僕の考える船での仕事は、ひとことでいうと「営業」だ。
売る商品は自分の技術、スキル。それを磨き上げプレゼンし、良いと思った人に買ってもらう。
普通の営業と違うのは商品開発からブランディング、サービスの提供まで、全部自分でやらないといけない事だ。
これは聞きようによっては大変に聞こえるかもしれないが、実はすごくラッキーな事でもある。
他と比べて自社の製品がどういった面で優れているのか、なぜ他ではなく自社の製品でなくてはいけないのか?
そういった事を一番わかっているのは自分自身のはずだからだ。
その辺りに落ちている石ころを売ってこい!と言われて、なんとかその石ころに価値をつけて売るということに比べれば100倍くらい楽だと思う。
もし僕の提案を真剣に考えてくれて、例えば半年後を目処に豪華客船に乗る事を考えてくれるなら、今君がやらないといけない事は間違いなく「英語」と「技術」の向上だ。
英語は今の時代フィリピン人とスカイプで話すのはそんなに高くないし、出来たら僕が筑波大の外国語サークルにお邪魔させてもらっていたように、どこか英語で交流できるコミュニティーを見つけて飛び込もう。
技術に関してはとにかく腰痛、坐骨神経痛、首、肩、膝痛など整形外科疾患について、ちゃんと徒手検査などを元に、そもそも鍼灸の適応疾患なのかそうじゃないかを見極められるようになり、しっかり治療できるようにしておこう。
ただ英語に関して言えば豪華客船に乗っているお客さんは基本的に少し余裕がある人が多いし、更にその中で鍼治療を受けようなんていう人はかなり健康意識が高い人が多い。
一重まぶたで典型的なアジア人顔をしている君はそれだけでアドバンテージだ。多少英語が下手くそでも多めに見てくれる。
その患者さん達の優しさに甘えながら少しずつ英語を学んでいけばよい。
そして自分が大人になった時、自分が生まれ育った環境と大きく違う場所で頑張る誰かを見つけたら、今度は優しく見守り応援する立場になれば良い。
そうやって世界は出来ているのではないかと中年になった僕はそう思う。
世界はバファリンと同じくらい実は優しさで出来てるんじゃないかって。
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まぁ実際の君、つまり過去の僕は結局地元のクリニックに就職するわけだが、それも悪い選択では無かったと思う。
当時の僕は病院とかクリニックって言うとなんだか聞こえも良いし、待遇も少し他よりも良いからという安直な理由で選んでしまったわけだけれど、どこの接骨院や病院のリハビリ室にも患者さんから
「あの先生に診てもらいたい。」
という人気の先生というのがいるはずだ。
そういった先生たちを見て、何故あの先生は人気があるかという事を学んだり、盗んだりできるからだ。
船では
“何となくこの先生に診てもらいたいな”
と思わせる能力というのはすごく大事で、僕は今船で働いている立場から、そういう人気のある先生ほど日本で開業せずに、船に乗って世界でどれだけ通用するか挑戦してほしいと思っている。
まぁ結局君はクリニックに就職して1年後、臨床という大海原で完全に迷子になってしまったため筑波に渡り、臨床の基礎を学び直すことになるのだがそこでも何一つ無駄な事なんてなかったと思っている。
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実際この提案を受けてもし万が一船に乗ったとしてもきっと最初の一ヶ月は僕の事を恨むだろう。
というのも僕は船に乗って最初の数ヶ月間はストレスで常に口内炎とお友達状態だった。
これが近所のコンビニのバイトなら辛くてバックレて辞めていたと正直思う。
ただそこはカリブ海だった。パスポートも預けていたし、やるしかなかったからやっただけである。
仕事で疲れ、治療に悩み、クルーバーで慣れないお酒を飲んで、どうも仲良く慣れないインド人と気まずい沈黙を超え、踊り狂って気持ち悪くなって外に出た時、君の真上に広がる空を見てほしい。
日本では到底見る事の出来ない、まるで宝石を散りばめたかのような星空が君を待っている。
その星空は君が頑張ってきた事を全部見つめていて、優しく受け入れ、そっと抱きしめるように疲れた心を癒やしてくれる。
そんな圧倒的な星空、圧倒的な夕焼け、圧倒的に透明な海、圧倒的な船内のエンターテインメント。
それらはそれだけで、何かまた明日から頑張ろうと僕らを錯覚させてしまう。でもそんな錯覚の毎日を続けていくうちに、気づけば自分自身は成長している。
だから是非、たった今手に入れたその資格を活かして豪華客船で働いてみるのはいかがだろうか?
リョウタ@豪華客船鍼灸師 (@muranasyo) | Twitter
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